相続登記が義務化された理由とは

相続で不動産を所有することになれば、名義変更の登記を済ませるのが基本。これが相続登記と呼ばれるもので、一般的には相続の発生から10ヶ月程度で登記手続きを済ませる傾向があります。ところが相続人の中には、相続登記の手続きにかかる費用や税金を支払いたくない、そのうち済ませようとおもっていたが失念してしまった、そもそも登記が必要であるという知識さえ持っていなかった等、このような理由によって、未登記のまま不動産を放置するケースも数多く目立つのが実状です。しかし未登記の相続不動産を放置し続けることは、様々なリスクやデメリットを招くことになりかねません。

例えば私人間の取引では、いざ相続不動産を売却したくても、未登記では信頼性が低いので買い手が付かなかったり、金融機関から融資を受けたくても、不動産の担保価値が認められずに却下されるなど、このようなケースが典型的。また相続の手続きのシーンでも、長年にわたり未登記で放置したことによって、相続人が増えすぎたり、相続人の一部が高齢化するなどして、遺産分割協議がまとまらないといったケースも見られます。さらに公共セクターにおいても、国や自治体による用地買収や防災対策工事が進まない等、国民や市民に深刻な不利益をもたらすことさえあり得ます。国ではこのような未登記の相続不動産がもたらす様々な問題を解消するために、法改正して2024年度からは相続登記の義務化を決定しました。

この義務化の法改正で重要なポイントは、期限と罰則を規定したこと。すなわち特定の不動産を相続したことを認識して3年以内に登記を済ませる義務化に反すれば、10万円以下の過料を受ける可能性があります。これは改正前の不動産も対象になるので、心当たりのある相続人の方は、しっかり対策すべきでしょう。